藤田医科大学医学部
放射線医学教室
主任教授 井上 政則
2024年6月1日付で藤田医科大学 放射線医学教室の主任教授として着任いたしました。藤田医科大学の放射線医学教室は1973年の藤田学園・名古屋保健衛生大学病院(現藤田医科大学病院)の開院と同時に開設された歴史ある医局です。私は放射線医学教室の第4代目の主任教授になります。諸先輩方が築かれた伝統ある教室を継承していくことに、大変身の引き締まる思いです。 放射線科は、全ての診療科の画像診断やIVR(画像下治療)を担当する中央診療科です。最新の医療機器を用いて、様々な画像を構築し、的確な読影結果を提供しています。また、全身の臓器に対して、血管系、非血管系全てのIVRを行い、侵襲が少ない治療を患者さんに提供しています。 各科と横断的に関わることで、医療全体を俯瞰できることも当科の大きな特徴です。病院の医療の質の向上、医療安全との観点からも読影やIVRは極めて重要です 当科は若い先生が多い活気のある教室であり、若い先生も働きやすい環境を提供しています。藤田医科大学は40を越える診療科と1300を越える病床数がある国内でも最大級の大学病院であり豊富な症例があります。優秀な読影医の育成に注力するのみならず、IVRを専門にする数少ない主任教授として、優秀IVR医の育成にも尽力したいと思っています。是非、当科の見学にお越しください。
産学共同研究とともに歩んできた
放射線医学教室の歴史
藤田学園・名古屋保健衛生大学病院(現藤田医科大学病院)の1973年5月開院にあたり、名古屋大学から古賀佑彦教授が着任されました。1975年には国産CT1号機(日立製頭部用)が東京女子医大(英国製)に次いでわが国で2番目に導入されています。その後東芝との共同開発が進められ、1990年には世界初のヘリカルCT、2007年には320列の面検出器CTが開発されました。2001年、古賀教授の定年退職後、片田和広教授が第2代教授に就任されました。片田教授は就任後も被ばく低減技術など一貫してCTの共同開発を進め、藤田医科大学放射線医学教室は世界をリードしてきました。 2012年には藤田学園50周年記念事業の一環として、低侵襲画像診断・治療センター(放射線棟)がオープンしました。日本で初の一棟まるごと放射線関係の施設です。地下1階:放射線治療1階:核医学、2階:MRI、3階:ハイブリッド手術(血管造影)、4階:CT、5階:透視とモダリィティ別に分かれています。各フロアに最新鋭の機器が導入されました。 2013年、片田教授の定年退職後に外山宏が第3代教授に就任しました。放射線棟は、高精度定位放射線治療および強度変調放射線治療装置、密封放射線治療装置が当院で初めて導入され、がん病巣に絞った詳細な治療が可能になりました。その後、PET/CT装置、SPECT/CT装置、頭部・心臓用3検出器SPECT装置も導入され形態のみでなく、代謝、機能も含めてより詳細で精度の高い画像診断が可能となりました。超高磁場(3テスラ)MRI装置は3台導入され診断に威力を発揮しています。 ハイブリッド手術フロアには5台の血管造影装置が導入され各科が診療に使用しています。放射線科には320列CTと一体となった最新のCannon社製IVR-CT装置があり、血管系、非血管系など全ての複雑な治療にも対応できる環境があります。これらの機器を使用して365日、緊急IVR症例に対応しております。 CTフロアには本学放射線科が中心となり産学共同開発した320列面検出器CTが 3台あり、世界最速0.275秒/回転、1度に16cmの範囲をスキャンすることができます。脳、心臓全体などの”4次元(3次元の広がり+時間)”の詳細な情報を得ることができます。X線透視フロアにはフラットパネル搭載型透視装置4台があり、詳細な消化管検査が可能です。産学共同研究も進めており、新しい装置や測定法の開発を進めています。研究には、学内の他科、医療科学部放射線学科教員など多くの人がかかわっており、多施設共同研究も推進しています。 2024年5月からは高度ながん治療の提供に向け、放射性医薬品を体内に投与して診断・治療を行う核医学の専用施設「セラノスティクスセンター」が本格稼働しました。地下1階には、放射性同位元素(核種)を製造するサイクロトロン(粒子加速器)や核種を放射性医薬品にするための合成装置、1階には患者さんが治療を受けるための投与室などが設けられています。
新たな時代の幕開け
2024年6月からは私、井上政則が慶應義塾大学より主任教授として赴任しました。IVRを専門としながら、全ての画像診断を統括して医局を発展させて行きたいと思っています。特に、IVRに於いて、血管系、非血管系全てに精通しています。他院で治療困難な内臓動脈瘤や動静脈奇形、術後難治性リンパ漏等の治療を多く行ってきており、経験豊富です。またオスラー病(遺伝性毛細血管拡張症)の診療や動静脈奇形を中心とした脈管奇形の診療には積極的に関わってきました。日本でも有数の治療経験があります。呼吸器内科、呼吸器外科、耳鼻科、消化器内科、循環器内科、脳外科、心臓血管外科、血管外科、形成外科、麻酔科、泌尿器科など多くの診療科と協力し、オスラー病や脈管奇形の患者さんを集学的にしっかりと診療できる体制が整っております。 難治性リンパ漏に対するIVR治療は比較的新しい領域です。そのパイオニアとして多くのリンパ漏の治療を行い、論文化もして参りました。多くの海外講演や海外での指導も経験しております。リンパ漏では術後リンパ漏のみならず、先天性心疾患に関連した蛋白漏出性胃腸症や乳び漏、鋳型状気管支炎などの治療にも積極的に取り組んでいます。 IVR外来(火曜、土曜、他は適宜対応)も開設致しましたので、是非患者様のご紹介を頂ければ幸いです。