主な治療方法
IVRとは
IVRとはInterventional Radiology(インターベンショナル・ラジオロジー)の略で、日本語では画像下治療と呼ばれます。X線透視やCT、超音波などの画像を用いて、体内の病変をみながらカテーテルや特殊な針、塞栓物質等を用いて治療する医療技術のことです。基本的に、身体を大きく切ったりしないため、低侵襲であり身体への負担が少なく高齢の患者さんでも安心して治療を受けられます。待期的な治療に加えて出血等の急性疾患の治療でも迅速に治療の効果が得られます。現在の医療には欠かせない手技となっています。
当科では心臓と脳を除いた全ての領域のIVRを日本IVR学会専門医を中心とした放射線科スタッフが行っています。血管系IVR、非血管系IVR、リンパ系IVR、オンコロジー(悪性腫瘍に対する治療)IVRなど、その守備範囲は多岐にわたります。具体的には動脈塞栓術、血管形成術、門脈塞栓(PTPE)や胃静脈瘤に対する治療(B-RTO)、門脈体循環シャント塞栓、Budd-Chiari症候群の治療、リザーバー留置術、副腎静脈サンプリングなどの血管系IVR、CTガイド下生検、CTガイド下ドレナージ、PTBDなどの非血管系IVRがあります。緊急のIVR(外傷や消化管出血、術後出血など)も多く日中夜間問わず迅速に対応しています。また子宮筋腫に対する動脈塞栓術(UAE)も産婦人科と協力体制で開始をしています。頭頸部領域ではバルーンマタステスト、頸部口腔内の悪性腫瘍に対する経皮的動注化学療法など外頸動脈領域のIVRも行っております。
2024年6月からはIVRの専門家であり、特に稀な疾患である脈管奇形、オスラー病、リンパ異常、内臓動脈瘤の治療を得意とする井上教授が慶應大学より就任したこともあり、先進的な医療である様々なリンパ漏や先天性心疾患(Fontan術後)の蛋白漏出性胃腸症や鋳型状気管支炎に対する治療、先天性リンパ異常(ゴーハム病やヌーナン症候群、GLA)などの治療にも取り組み始めています。
また既に動静脈奇形や静脈奇形などの脈管奇形の治療、オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症)の治療にも多診療科で協力して治療する体制を構築し、血管系の疾患に関しては血管外科、心臓外科とも協力して治療に取り組んでいます。内臓動脈瘤の治療には高い技術力が必要であり、可能な限り瘤内塞栓を行い、親血管を温存する手技を行っています。チーム医療のなかで各診療科と連携し、先進的なIVRを数多く提供しています。
既に多くの病院より脈管奇形、オスラー病、リンパ漏、Budd-Chiari症候群などの様々な治療困難な患者さんのご紹介をいただいております。
対象疾患/手技
当科のIVRの特徴
- 内臓動脈瘤
- オスラー病(肺動静脈奇形)
- 脈管奇形
- リンパ漏(術後リンパ漏、蛋白漏出性胃腸症等)
- 門脈圧亢進症(胃静脈瘤、異所性静脈瘤、門脈体循環シャント、Budd-Chiari症候群)
- 動注化学療法
- 胆道系IVR
- 生検 など
当科で積極的に稀な疾患に対するIVRや他院で治療困難なIVRを行っています。内臓動脈瘤の治療では臓器への血流を温存して塞栓を行います。このためには高い技術が必要であり、脳血管のIVRの手技にも精通する必要があります。日本でも有数の治療経験を有する医師が対応し、最適な治療を行います。脈管奇形の中でも動静脈奇形の治療は特殊な領域であり、多くの施設で不適切な治療が行われているのが現状です。当科では世界の動静脈治療の権威である米国のYakes医師や韓国のDo医師とも協力をして、動静脈奇形に対する正しい治療を行っています。動静脈奇形の治療には豊富な経験が求められます。繰り返しになりますが他院で治療困難な例でも治療が可能であることもありますので、治療にお悩みの場合はぜひ当科のIVR外来にご相談ください。オスラー病の肺動静脈奇形は脳梗塞などの奇異性塞栓の原因となる疾患ですが、治療されずに放置されている例も多くみられます。
当院では肺動静脈奇形の塞栓に関しても有数の経験があり、再開通をしないように充分な塞栓を行います。またオスラー病に関しては遺伝子診断を含めて総合的な診療が可能となっています。リンパ異常に対するIVRは比較的新しい治療であり、多くの病院では治療の経験があまりありません。当院では日本のリンパ系IVRを牽引してきた医師がリンパ漏やリンパ異常の治療と画像診断に対応します。倫理委員会を通して特殊なMRリンパ管造影を行う事も可能です。門脈系IVRに関しても胃静脈瘤に対するB-RTOや門脈体循環シャント、Budd-Chiari症候群など全ての病態に対応可能です。消化器内科とも連携をして治療にあたります。頭頸部領域でも頸部腫瘍術前のバルーンマタステスト、頸部口腔内悪性腫瘍に対する経皮的動注化学療法も積極的に行っています。非血管系IVRでは腫瘍性病変に対するCTガイド下生検、膿瘍や胸腹水に対するCTガイド下ドレナージ、胆管狭窄に対するPTBDと多岐にわたる疾患、手技を行っています。